理系バカと文系バカ

理系バカと文系バカ (PHP新書)

理系バカと文系バカ (PHP新書)を読んだ。飛行機内で、読破できた。軽い読み物。
言いたいことは分かる。普段から学生に言ってることだからだ。心理学の講義をしていると、「心理学って文系なのですか、理系なのですか」とか「心理学と科学ってどういう関係があるのですか」とか聞かれる。

ずいぶんと世界を狭く使っているなぁ、という感じである。
文理の分け方なぞは恣意的なもので、いずれも世界を理解するための方法でしかないのだから、必要に応じて利用すればよいのにな、と思う。

この本でも指摘していたが、理系と文系の区分には、「数学が嫌いなので文系」という消去法的文系が間に入ることが多い。逆はあまり見かけないけどね。数学が嫌いなので、というのは実は表層的な問題で、根本は「論理的に考えるのが嫌いなので」、もっというと「考えるのが嫌いなので」というのがあるように思う。「具体的に考えるのが嫌いなので、抽象論・概念論で議論できる文系がよい」という話は、ついぞ聞いたことが無い。

さらにいえば、理系バカ、文系バカというのは正しい区分ではなく、理系、文系、非理系、バカ、の四分割がただしいのではないか。バカ、といえば聞こえが悪いが、思考が先に働くタイプかどうか、ということだ。少なくとも、大学生に求められているのは思考力なので、バカだけど何とか一夜漬け・丸暗記で大学までこれた、というのは不幸以外の何者でもないのである。

本書には、統計のミスリードやマスコミ・リテラシー、似非科学の問題までつまっている。言い換えると、そのような周辺的で人目を引き安い問題でページを埋めている感じが否めない。もうすこし文理の歴史的流れ、海外の事情、文理融合の分野の詳細など、ロジカルに書いてあってほしかった。そういう意味では、とても文系的読み物なわけです(笑)

文庫として、売れるための仕掛けがいくつもあるが、もう少し建設的なお話も欲しかったな、と思った次第。

いずれにせよ、我々はもっと心を自由にしなければならない。