読書案内

他人を見下す若者たち (講談社現代新書)」を読んだ。

タイトルや帯のキャッチーさとは裏腹に、心理学者が多少のデータをもとに書いているようなので、読んでみたのだ。

結論から言って、データから言えること以上に、筆者の思いが伝わってくる。
いちいち「そこまで言い切れないでしょう、それはあなたの思いこみでしょう」と思ってしまう。
要するに、悲観的に現代社会を見ているのだ。いわゆるスーぺー学者?でしたっけ。

例えば、最後のほうに、こんな言及がある。

いずれにせよ今後予想される社会は、個々バラバラの社会である。だれもが競争に勝ち抜くために、先手を打つ形で、周りの相手を軽蔑したり軽視したりするのである。それは人間同士の温かみが伝わらない冷え切った社会である。学校でも会社でも、人は自分の幸せだけに関心を持ち、みんなで支え合う農耕社会的な要素をすっかり忘れてしまうだろう。

あまりにも悲観的じゃないか。ここまですぐに行ってしまうほど、人間は適応力が弱いわけではない。どのような環境であれ、若者も年寄りも、人間は結構最適戦略を選んでいる、というのが私の考えであり、最適解がこのような社会であるとは思えない。この道中で揺り戻しが来るか、社会の分断が起こるかはわからないが・・・ここまで不幸にはなり得ないだろう。

現代日本は、伝統的な価値観から西洋的な価値観に移行している時期だ、という主旨はわかる。
そして100%西洋的な価値観の社会になってしまっても、いや、なってしまえばこそ、上記のような不幸な状態ではないだろう。

そういう意味では、今現在青春を迎えている人間は不幸なのかもしれないけど−。それはそれで、今時の子たちに怒られるセリフだな。

ま、読みやすいし、(社会)心理学の初学者には面白い本じゃないかな。